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愛情とセックスはひとつのものだという幻想について。 「モザイク」(勝目 梓)

モザイク (祥伝社文庫)モザイク (祥伝社文庫)
(2007/06)
勝目 梓

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おすすめ度:★★★★★

見知らぬ相手から送られてきた一本のビデオ。
再生すると、恋人・由香が出演するアダルトビデオだった。
彼女の顔に、男優の精液が飛び散る。
主人公・周二は、「愛の地獄」に突き落とされる。

ふつうはここで別れてしまうのかもしれない。
裏切りを許せないという怒り。
独占欲が満たされなかったという嫉妬心。
また、男にとって、AV女優の体験を持っている恋人というのは、持て余す気持ちもある。
しかし、由香を本当に愛する周二は、“愛情とセックスはひとつのものだという幻想”を打ち砕くべく、深淵なる性(セックス)の世界へ足を踏み入れていく・・・

二人の未来に希望の光はさすのか?
壮大な実験に挑む二人を、いつのまにか応援している自分がいました。

「フリーセックスというのは、社会的な制約やモラルや、人と人とのしがらみやらを打破して、自由な性行動を認めようということだけじゃないと思うんです。
そこには人それぞれが、自分の抱えている性的な歪みや、こだわりから自由になろう、不必要にセックスを特別視してそれに捉われることを止めよう、という考え方も含まれているんだ、とあたしは思っているんです」


由香が出演したアダルトビデオの監督の言葉である。
性的独占欲や性的忠誠心に何の価値があるのか?
道徳が作り出した神話であり、迷信や盲信ではないのか?
その神話が、我々を不必要に抑圧しているのではないか?
本作品を読んで、自分がいかに“愛情とセックスはひとつのものだという幻想”に支配されているか、気づかされました。
性と愛に関心があるすべての人に捧げる一冊。
セックス観が180度変わること請け合いです!


【関連作品】
同著者の気になる性愛小説はこちら。
老年期を迎えて人生の伴侶である妻を喪った男が、初めて味わうめくるめく性の愉悦と修羅とは?

爛れ火 (祥伝社文庫)爛れ火 (祥伝社文庫)
(2006/10)
勝目 梓

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人妻と娘を拉致監禁。エロスとバイオレンスが吹きすさぶ、怒涛の復讐劇。 「鬼畜」(勝目 梓)

鬼畜 (講談社文庫)鬼畜 (講談社文庫)
(2003/03/14)
勝目 梓

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おすすめ度:★★★★

元銀行員の三沢は、自分の妻と娘の恨みを晴らすため、元上司の妻と娘を拉致、監禁する。
社畜をやめて鬼畜になることを心に誓った男は、暴虐の復讐劇を開始した。
エロスありバイオレンスありの、疾風怒涛のハードボイルド。

人妻監禁もの、しかも娘も一緒にというのに魅かれて、本作品を手にしました。
一般小説ですので、官能描写は、官能小説ほど濃密には描かれていません。
しかし、恐怖と恥辱で凍りついている人質の肉体に、できることなら情欲の火をおこしたいという主人公の企みを堪能できました。
一度犯されてるにもかかわらず、裸を見られることに抵抗を示したり、小便を垂れ流すことをためらう人質たちには、官能小説には無いリアリティがありました。
情欲に溺れるわけではなく、性交はあくまで復讐劇の一演出に過ぎないという、三沢のクールさもナイスです。

人間、絶望的な状況に追い込まれたら、死ぬ気になって(火事場のくそ力で)何でもできるということを痛感しました。
じゃあ、なんで今すぐ、死ぬ気でやんないのという話で・・・
登場人物たちやストーリーに救いはあるのかと問われれば、無いかもしれない。
けれども、不思議とエネルギーがフツフツと湧いてきました。
まだまだ、俺もやれる。
やらなきゃいけないと。
エロスとバイオレンスは、男にとって元気の源なんですね。


【関連記事】
おすすめの人妻拉致監禁ものはこちら。

監禁クルージング (幻冬舎アウトロー文庫)監禁クルージング (幻冬舎アウトロー文庫)
(2010/12)
水無月 詩歌

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関連記事:監禁して凌辱するなら、勝気で貞淑な人妻にかぎる。 「監禁クルージング」(水無月 詩歌)


悪魔の部屋 (光文社文庫)悪魔の部屋 (光文社文庫)
(1985/01)
笹沢 左保

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関連記事: 【30日以上監禁される新婚妻】サスペンス性豊かな官能作品! 「悪魔の部屋」(笹沢 左保)

既婚者のモヤモヤの正体をあばく、性愛小説の極致。 「花酔ひ」(村山 由佳)

花酔ひ花酔ひ
(2012/02)
村山 由佳

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おすすめ度:★★★★★

バレンタインデーに、妻はチョコと一緒に本をプレゼントしてくれます。
今年は「どんな本がいい?」と聞かれたので、「一般小説で思いっきり官能的な作品がいいな。不倫小説とかね」と答えました。
今年のバレンタインに、妻からもらったのが本作品です。

本作品は、
恋というほど 激しくはなく
愛というほど 穏やかでもない
大人の情愛を描いた性愛小説です。

視点が、二組の夫婦(4人)の間で目まぐるしく変わります。
視点の転換と不倫小説の相性はバッチリです。
妻にあんな風に思われていた夫が、逆に妻のことをこんな風に思っていたのかというのが、リアリティを生んでおり、厚みのある夫婦像を浮かび上がらせています。
不倫ものって、妻なら妻、夫なら夫の一人の視点で書かれると、不公平で薄っぺらなものになります。
不倫する人の配偶者は、だいたいつまらない人として描かれます。
たとえば、煙草をやめない、気がきかない、エッチが自分本位・・・
でも、実際はそんな一方的ではないはずです。
どんな人間でもいいところもあれば悪いところもあります。
好きになれば何でもよく見えるし、気持ちが冷めてくれば同じことでも悪く見えるだけです。

東京の下町と京都を舞台に、日本的な情緒を織り交ぜて、既婚者の情愛を描き切っています。
官能文学の極致と言ったら言い過ぎでしょうか。
私が今までに読んだ性愛小説の中でも一番官能的でした。

ハタから見れば、幸せな家庭を築いているし、そのことに感謝もしています。
でも、心のどこかに隠しきれないモヤモヤがあります。
心の渇きとか、そんなかっこいいものじゃありません。
曖昧模糊としたもの、それはもうモヤモヤと呼ぶしかないのです。
そのモヤモヤの正体が、本作品で明らかになります。
結婚して10年以上の既婚者が、ゆっくりと味わいながら読みすすめたい、大人の作品です。
ホワイトデーに奥様へプレゼントして、夫婦で楽しむのもオススメです。


【編集後記】
同著者の気になる官能作品はこちら。
誰かと重なり合いたいという、根源的な欲望を抱える12人の女性たちの長編連作小説。

アダルト・エデュケーションアダルト・エデュケーション
(2010/07/22)
村山 由佳

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通勤電車で読みたい、中年サラリーマンが元気になれる性愛小説。 「夜の桃」(石田 衣良)

夜の桃 (新潮文庫)夜の桃 (新潮文庫)
(2010/12)
石田 衣良

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おすすめ度:★★★★★

45歳の主人公は、時代の寵児ともてはやされるIT会社社長。
美しい妻とグラマーな愛人、ふたりの女の間を行きかい、彼は十分に満足していた。
そんな折、一人のやせっぽちの若い女と出会うことで、彼の人生は転がり始める・・・

それにしても、「肌が合う」とはどういうことをいうのでしょうか。
よく40代の女性は、肌が合いやすいと言います。
男性経験が豊かなので、相手がこう来るなら、私はこう行くと、相手に合わせることができるのです。
でも、本作品の「肌が合う」は、それとはまったく次元が違います。
もっと奇跡的で運命的なものです。
肌が触れ合っただけで電気が走る。
肉棒の形に合わせてアソコが変化する。
男に生まれたからには、「肌が合う」というのを、一度でいいから体験してみたいものです。
ただし、お互いが最高の相手なわけで、一度で済むわけがなく、すべてを失うリスクがあります。

本作品には、中年サラリーマンの心をくすぐる言葉が散りばめられています。

金にも物にも果てがなかった。
だが、そういう世のなかで、男と女のことだけは別だった。
どれほど金があっても、愛情やほんとうにいいセックスは買うことができない。
どこかのIT成金が金で買えないものはないといったが、ああいったことをいうのは決まって女にもてない男だった。
どちらも経験したことのない人間だけが、愛といいセックスを買えると思いこむのだ。
貧しい者が、金さえあれば幸福になれると信じるように。


痛快です。
平凡な中年サラリーマンの溜飲が下がります。


雅人は肩を抱いた手を、女の胸の先に伸ばした。
麻衣佳の乳輪は濃くておおきい。
遊んでいるといわれる形だが、崩れているのが逆に雅人の好みだった。


会社の上司も、乳輪好きを公言しています。(公言するようなことか!?)
乳輪は大きければ大きいほどよい、と言います。
乳首は大きすぎない方がいいですが、乳輪が小さかったり、色が薄かったりすると、上品すぎてがっかりしてしまいます。


「やっぱり太ったのかな」
「いいや、昔よりもずっといい女になった。結局、色気っていうのは、どれだけ自分の欲望を認められるようになるかってことなのかもしれないな」


欲望は生のエンジンである。
主人公は欲望に素直に生きた。
世間の物差しではかったら、彼は転落したと言えるかもしれない。
けれども、彼は後悔なんてしないだろう。
欲望にまっすぐに生きた、愛した。
彼の人生を、彼は生きたのです。

我々が、「結婚している」「守るべきものがある」「もう中年のオッサンだから」などとうそぶいて、とても飛び込むことができない官能世界を堪能できました。
平凡な中年サラリーマンが、通勤電車で読んで、元気になれる快作です。
元気になりすぎて、一日中、下半身がムズムズします。
「肌が合う」女性との出会いを妄想して、トキメキとうすら寒さが同時に襲ってくる。
ドキドキして仕事が手につかなくなる。
自意識過剰になって、会社の女性とまともに目を合わせられない。
こんな性愛小説を待っていたのです。


【編集後記】
本日、リアル書店で購入した新刊はこちら。
舞台は産婦人科の診察室です。

誑かす【三人の若妻】 (フランス書院文庫)誑かす【三人の若妻】 (フランス書院文庫)
(2012/01/23)
御堂 乱

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不倫相手と再婚した女のその後、教えます。 「不機嫌な果実」(林 真理子)

不機嫌な果実 (文春文庫)不機嫌な果実 (文春文庫)
(2001/01)
林 真理子

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おすすめ度:★★★★

同著者の 「ミスキャスト (講談社文庫)」は、夫を主人公にした不倫小説でした。
本作品は、人妻を主人公にした不倫小説です。

「ミスキャスト」の主人公に対して、私は「この俗物が!」と声を荒げました。
本作品のヒロイン・麻也子(32歳)も、誰かとの比較でしか自分の幸せを計れない女俗物です。

ひょっとすると、自分の夫はみっともない方なんじゃないか。
私って本当はついていない人間なんじゃないだろうか。
自分だけが損をしている・・・

「もっともっと欲しい!」というバブルの時代。
世間体という古い価値観に囚われた親たちの世代。
それらの影響をもろに受けているのでしょう。
現代の我々からすると、彼女の感性は少しズレていると言わざるをえません。

「ねえ、世の中の奥さんって、男の人から抱きすくめられたり、好きだって言われたり、キスされたりしないで、どうして生きていけるんだろう・・・」

女も男も同じなんですね。
しばらくは生きていけても、いつか生きていけなくなります。
特に恋愛体質の奥さんや旦那さんは。
長い冬眠生活から目覚めるのは、時間の問題です。

それにしても「人妻」というのは有り難いものです。
人妻というだけで、不倫というだけで、果実の甘みがいや増す。
キスをしただけでこんなにドキドキするのだから、セックスしたら一体どうなってしまうのか!?
私の持論ですが、神様は不倫という果実を人間に与えるために、結婚という制度を作ったのではないかと疑っています。
結婚がなければ、浮気も不倫も貞淑も貞操もない、もとい、不倫小説も人妻官能小説もなかった。
人妻官能小説ファンの一人として、結婚制度に心から感謝です。

情事あり、ダブル不倫あり、夫婦の修羅場あり。
不倫小説にしばらくハマりそうな予感です!


【関連作品】
ミスキャスト (講談社文庫)ミスキャスト (講談社文庫)
(2003/11/14)
林 真理子

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関連記事:不倫相手と再婚した男のその後、教えます。 「ミスキャスト」(林 真理子)

監禁して凌辱するなら、勝気で貞淑な人妻にかぎる。 「監禁クルージング」(水無月 詩歌)

監禁クルージング (幻冬舎アウトロー文庫)監禁クルージング (幻冬舎アウトロー文庫)
(2010/12)
水無月 詩歌

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おすすめ度:★★★★

読みやすい文体で、心理描写も情景描写も精緻かつ丁寧。
官能描写に頼ることなく、ぐいぐい読ませる、官能作家離れした筆力は見事です。
監禁された人妻の悲哀感と登場人物にまつわるサスペンス性は、笹沢左保さんの名作「悪魔の部屋」に通じるものがあります。

中堅企業の社長夫人・美玲がクルージングボートに監禁されます。
海上の岸を遠く離れた密室で繰り返される、凌辱の日々。
女に生まれたことを後悔するような、恥と屈辱以外になんの選択権も与えられない世界。
人妻は、何度も堕ちそうになりますが、持ち前の勝気な性格と夫への愛を心の支えに、けっして完堕ちしません。

終盤、夫と夫婦生活にまつわる衝撃の事実が明かされます。
人妻が最後にどうなってしまうのか。
一度読み始めたら、見届けないわけにはいかないでしょう。
圧倒される読後感。
著者には、「女性向け官能小説」もいいですが、本作品のような「男性向け人妻官能小説」も精力的に書いて頂きたいです。


【編集後記】
同著者の気になる作品はこちら。

蜜色の秘書室 (幻冬舎アウトロー文庫)蜜色の秘書室 (幻冬舎アウトロー文庫)
(2009/12)
水無月 詩歌

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【関連作品】
「悪魔の部屋」は、人妻の心情変化を存分に堪能できます。
人妻官能小説ファンの方は、ぜひブックオフでゲットしてみて下さい。

悪魔の部屋 (光文社文庫)悪魔の部屋 (光文社文庫)
(1985/01)
笹沢 左保

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関連記事: 【30日以上監禁される新婚妻】サスペンス性豊かな官能作品! 「悪魔の部屋」(笹沢 左保)

関連記事: 【人妻官能小説のお手本】男には強姦願望が、女には被強姦願望がある。「悪魔の部屋」(笹沢左保)


我々と等身大の官能の物語。 「ダブル・ファンタジー」(村山 由佳)

ダブル・ファンタジー〈上〉 (文春文庫)ダブル・ファンタジー〈上〉 (文春文庫)
(2011/09/02)
村山 由佳

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ダブル・ファンタジー〈下〉 (文春文庫)ダブル・ファンタジー〈下〉 (文春文庫)
(2011/09/02)
村山 由佳

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おすすめ度:★★★★

人妻脚本家・奈津は、大御所の演出家に惚れていく。
彼との出会いにより、自分の中に眠っていた性に対する欲望を目覚めさせる。
トラウマを持つ不器用な奈津が、快楽の果てに見たものとは?

ヒロインは、才気と美貌を兼ね備えた人気脚本家です。
でも、その描かれ方はどこまでも我々読者と等身大です。
子供の頃は、家族による目に見えない囚われがあります。
そして、その囚われから解放してくれるはずの結婚が、知らず知らずのうちに新たな囚われに変わってしまう。
いくつになっても、けっして枯れることのない、恋や性にたいする憧れがくすぶり続けている。
我々が、ふだん気づかないふりをしていることを、本作品は気づかせてくれます。
ヒロインの場合は、一人の異性が、心のスイッチを押してくれるわけです。

それにしても、人間とは無いものねだりばかりしている気がします。
好きな人ができると、自分だけのものにしたくなる。
自分だけのものになったらなったで、今度は自由が欲しくなる。
逃げられると追うくせに、追われると逃げたくなる。
相手の幸せを願うなんていう高尚な気持ちは、幻想なのかもしれません。
恋とは、こんなにも自分本位なものだったのでしょうか・・・(遠い目)

官能の物語という帯文句に偽りなしです。
但し、読者が官能することを目的とする官能小説ではなく、ヒロインが赤裸々に官能を求める物語です。
ここまで潔く書き切った著者に拍手です。
妻にも読んでほしい気持ち半分、こんな世界観があることは見せたくない気持ち半分。
つくづく私はケツの穴の小さい男ですね・・・
でも、それが世の旦那さんたちの正直な気持ちではないでしょうか。


【編集後記】
同著者の骨太の恋愛小説はこちら。

野生の風 WILD WIND (集英社文庫)野生の風 WILD WIND (集英社文庫)
(1998/06/19)
村山 由佳

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不倫相手と再婚した男のその後、教えます。 「ミスキャスト」(林 真理子)

ミスキャスト (講談社文庫)ミスキャスト (講談社文庫)
(2003/11/14)
林 真理子

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おすすめ度:★★★★

妻も子供もいるのに、若い女の子を好きになっちゃう。
大恋愛の末、妻と子を捨てて再婚。
念願かなって、かつての不倫相手と結婚した男は、その後、幸せに暮らしているのでしょうか?

男性が主人公の不倫小説です。
この主人公の凡庸さが、半端ないです。
男の悪いところの見本市みたいな人間です。
不倫中のこずるい男性の心理描写は素晴らしいですが、ここまで書かれると同じ男性として立つ瀬がないです。
しまいには腹が立ってきます。
男性の私でこれですから、女性が読んだら、本をぶん投げたくなるでしょう。

主人公は、川面にただよう根なし草のような男です。
確固たる自分の意志は何もありません。
ちょっとばかし仕事ができるのを鼻にかけ、この年で若い女とうまく恋愛できる自分をほめる。
自分のことを棚に上げ、妻の不倫を疑い、嫉妬心だけは人一倍強い。
世間の目を気にし、出世街道からはずれることを極度に恐れている。
思わず、「この俗物が!」と叫びたくなります。
男性の悪いところを凝縮したような男ですが、同じ男として、正直彼の気持ちが分からなくもないからつらいのです。
もし若い女の子に誘われたりしたら、自分も彼と同じような行動をとりかねない。
その怖さが、本作品の醍醐味でしょう。

やがて修羅場が訪れます。
心臓をわしづかみされるような息苦しさをおぼえました。
一生の間に、この場面、この瞬間だけは迎えたくないものです。
転落していく主人公に、溜飲が下がります。

「ミスキャスト」というタイトルが、最大の皮肉になっています。
「妻がミスキャストだったので離婚します」という意味ではありません。
こんな男が結婚すること自体、ミスキャストなんですね。


【編集後記】
同著者の女性を主人公にした不倫小説はこちら。

不機嫌な果実 (文春文庫)不機嫌な果実 (文春文庫)
(2001/01)
林 真理子

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女に生まれた喜びと恥辱。 「教育実習生」(松崎 詩織)

教育実習生 (幻冬舎アウトロー文庫)教育実習生 (幻冬舎アウトロー文庫)
(2006/06)
松崎 詩織

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おすすめ度:★★★★

美少年との狂おしい同棲生活。
露出狂との危険な遊び。
禁断の快楽に溺れる教育実習。
3つの情痴小説を収録した著者のデビュー作です。

ごく普通の女子大生が、性に溺れ、性に翻弄される。
男性でも一生に一度はそんな経験をしてみたいもの。
女性なら、なおさらではないでしょうか。

女として生まれてきたことを後悔したくなるほどの羞恥と屈辱の中、
私は今ほど女であることを深く感じたこともなかった。


女に生まれてきた喜びと恥辱をいっぺんに味わう。
まさに女性のための官能小説です。
妻にもぜひ本作品を紹介したいと思います。

本作品読了後、通勤電車の人たちの顔が、違って見えてきました。
むっつりと真面目な顔で満員電車に揺られる人たち。
みんなも本当は心の奥に、性に溺れ翻弄されたいという欲望を隠しているのかもしれませんね。


【編集後記】
本屋さんで見つけて、今一番楽しみなのがこちら。
妻の母こそ、禁断・背徳の極致です。

淫獣の暴走 妻の母を、妻の妹を (フランス書院文庫)淫獣の暴走 妻の母を、妻の妹を (フランス書院文庫)
(2011/01/24)
田沼淳一

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中年サラリーマンの「一生に一度の恋」! 「恋人」(松崎 詩織)

恋人 (幻冬舎アウトロー文庫)恋人 (幻冬舎アウトロー文庫)
(2010/06)
松崎 詩織

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おすすめ度:★★★★

母は、30歳になる私の妹が結婚できるか、心配しています。結婚しなければ、絶対に幸せにはなれないというわけです。私は、妹が死ぬほど人を好きになったことがあるのかを心配しています。たとえ結婚したとしても、そんな恋をしていなければ、人生を生きたと言えるのでしょうか?

さて、本作品の主人公である中年サラリーマン・神崎(43歳)は、隣の部の美奈(27歳)に淡い憧れを抱いていました。彼女は、元気で明るく、いつもみんなの中心にいるような女性です。神崎は、こっそり彼女の後ろ姿やヒップラインを盗み見ては、あんな子とエッチできたら最高だろうなと、バカバカしい妄想にふけっていました。そんなある日、会社からの帰り道、偶然出会ったことから、二人の恋が始まります。

初めは、こんなに若い彼女と付き合っているんだという、優越感だけで満足していたはずです。しかし、心も体もすっかり美奈の魅力に翻弄された神崎は、しだいに本気の恋におちていきます。神崎いわく、「一生に一度の恋」です。

既婚者の中年の恋なんて、美しいものではありません。第三者から見れば、ただの不倫であり、正当化できるものではありません。でも、本人は、いたって本気です。まるでウブな高校生や大学生のように、繊細でひどく傷つきやすいのです。こんな中年の恋が読みたかった!

本作品のもう一つの魅力は、美奈の描かれ方にあります。今時の若い女性らしい奔放さがある一方で、しっかり自分というものを持っていて、そこには凛とした美しさがあります。男性作家の作品にありがちな、どこまでも男性に都合のいい女性像とは一線を画し、女性がきちんと描かれているところに好感が持てます。このあたりは女性作家ならではといえるかもしれません。抱擁の力強さ、セックス描写のきれいさ、キスシーンが多くて濃厚なのも印象的でした。

とにかく、「(若い女の子と?)恋がしたい、恋がしたい、恋がしたい」と日々悶々としている中年サラリーマンのみなさんに激オススメです。カッコつけた文学作品ではけっして味わえない、リアルな“恋人”がここにいます。あなたも「一生に一度の恋」、してみませんか?


【関連作品】
同著者の気になる作品はこちら。

教育実習生 (幻冬舎アウトロー文庫)教育実習生 (幻冬舎アウトロー文庫)
(2006/06)
松崎 詩織

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